2009年11月22日

54 桂川リアルアッパー(桂川3)

水位:1.23m(桂川強瀬) 1.87m(大月) 気温:6℃(大月) 天気:曇り
区間:舟場橋〜高月橋(約x.xkm) 所要時間:約3.0h メンバー:モリ君、コニー、ブッシュ


 山梨県南東部を流れる桂川は、いわゆるアッパーとロワーと呼ばれる2セクションがダウンリバー対象として知られています。両者とも上流部のダム(川茂堰堤、駒橋堰堤)によって水量がコントロールされ、最低維持流量だけではかろうじて航下できる程度です。ただ、後者が比較的雨の影響を受けやすく、快適に下れる水量に達していることが多いのに対し、前者が豊富な水量を湛えているケースは稀です。発電取水量に違いがあるせいなのか、葛野川など支流の影響によるものなのか、理由はまだちゃんと調べていないので分かりません。
 釣り場としては超がつくメジャーなフィールドですが、観光地としてはマイナーだからなのか、御嶽のような観光放流は行われていません。ただし、両ダムでは年に一度、一週間程度の期間、定期放流を行う仕組みがあるようです。今週末は、ちょうどその定期放流の時期にあたるようで、愛知県在住のモリ君からお誘いのメールをいただきました。「桂川行きませんか?」としか書いてませんが、相手はあの世界のモリですから、行き先は間違いなくアッパーでしょう。

 桂川本流は、古くは明治の時代から発電目的に開発され、本来河道を流れているはずの水のほとんどは脇を走る導水路の中を流れています。河道を流れているのは、導水路の余水吐から戻される分と、支流から流入する分だけで、量としては非常に少なく、本来あるべき流量の1〜2割程度しかないのではないかと推測しています。
 そんな死にかけた川が、僅かな間ではあれ、息を吹き返すのがこの時期です。アッパーセクションは、あひるBのtakeさんと一緒に過去何度か下ったことがありますが、いずれもダム放流量ゼロの時でした。桂川本来の姿を体感してみたいという好奇心の面からも、行けるもんならぜひ行きたい。元々、この三連休は川に出るのは最終日だけと嫁さんと約束していましたが、色々とやりくりした結果、本日も行ってもいいという許可をいただきました。妻にはいくら感謝してもしたりないくらいです。

 さて、いざ行くとなると、はたしてラナを一緒に連れて行ってもよいかどうかという問題があります。確か、アッパーセクションの核心部分は両岸とも切り立った断崖で通らずになっており、ポーテージできないはずでした。やっぱ、危ないよな…。ただ、はらきりの瀬より下流なら、川幅が広がるので何とか行けそうかもと判断しました。ということで、ラナのみ、はらきりの瀬で待機してもらうことにしました。

 8時半に猿橋公園に行くと、モリ君の他にコニーとブッシュがいてました。ブッシュとは初顔合わせです。カヤック歴はまだ1年半らしいですが、何かいい雰囲気を持ってますね。能力高そうです。昨日この三名は、ワールドクラスのトップパドラーたちと下ったそうです。そこでコニーはチンダツし、かなりの恐怖を味わったらしく、怯えた子犬のような目をしていました。そして世界のモリ君には、回送時に助手席に乗り込んで開口一番、「このクルマ、犬臭いですねー」と言われました。歯に衣着せない物言いは相変わらずです。

 パドラーたちで賑わい、穏やかな秋晴れだったという昨日とはうって変わり、川には人っ子一人おらず、灰色の曇り空が広がっています。
 スタートは、舟場橋から。普段は細いドロップですが、今日は凄まじいボイルストリームでした。モリ君は果敢に突っ込んでましたが、私はボイルラインを回り込むようにして回避ルートを選択。

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 しばらく緩やかな流れが続きますが、やがて眼前に大きな六角柱の柱状節理でできた岩壁が見えてきました。核心部まで続く、渓谷部の入口です。待ち構えているのはヘアピンカーブと、1m強のドロップ。ドロップの下は、巻きの強いホールになっていて、ここも私は回避して下りました。



 この先は、普段の姿が思い出せないほどに変貌していました。
 シュガードロップと呼ばれる瀬に到着。コニーが昨日、巻かれてチンダツして心折れたのはここのホールらしいです。確かに、中央部はエディーのような渦に囲まれたバックウォッシュゾーンがあって、ブーフでパスしない限り、がっちり捕捉されそうな感じです。ただ、左岸側が崩れていて、このルートなら楽勝です。私は、そのどちらでもない右岸ベタから航下しました。



 今のところ、順調です。もうすぐ核心部ですが、確かその手前にも大きな瀬があったはず。まだ名前は付いていないようですが、侮れません。フネから降りて下見しました。

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 カレントが瀬の最後に一カ所に集まり、シュート状になっていました。普段の水のない時に比べると、均されて勾配は緩くなっているという印象を受けますが、水勢には凄まじいものがあります。航下ルートは、右岸ベタを使って回り込むという手もありですが、基本的には真っ向勝負でしょう。やや形の崩れたVストッパーが曲者です。10回やって、3回はひっくり返りそうやな、と読みました。

 この瀬の後も、間断なく瀬が続いています。転覆して、リカバリーに手間取るようなことがあれば、核心部も身一つで泳ぐこともありえます。

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 そしてそれは、危うく現実のものとなるところでした。
 ストッパーウェーブにぶち当たった後、勢い足らずスターンを食われ、沈み込まされてしまいました。バウが持ち上がり、ウィリー状態になる。うわあああ〜、ここで沈は勘弁してや〜、と半泣きになりなりましたが、無情にも転覆。
 後で振り返ると、ストッパーに到るまでの加速が全然足りていませんでした。また、記憶があやふやですが、ストッパーに突っ込んだ瞬間のパドリングを空振ったような気がします。



 泣きべそかいてはいましたが、ある程度覚悟はしていたので、水上から水中に舞台が移っても意外と冷静でいられました。即座にリカバリーにかかりましたが、右足首がサイストラップに絡まってます。数秒かけて抜け出し、ボートを裏返す。カヤックなら多分、ここまでの段階でロール完了していますが、ダッキーはここから再乗艇というプラスワンの工程が残っています。これを、波立つカレントの中で流されながら試みるわけですが、焦ってタイミングを誤ると、乗り込む際に上流沈してしまいます。
 最初の試みでは、直後に岩にぶつかっていまい、中断。岩の裏に流されるまで待ってから再挑戦しました。今度は、成功。

 核心部の入口が、既にもう視界に入っていました。左右にも視野を広げてエディーを探す。サイストラップを装着したかったけど、そんな余裕はなく、おかげでボートコントロールが覚束なくなっています。もしエディーが見つからなければ、この不安定な状態のまま突っ込むしかありません。核心部はもう眼前に迫っています。が、ここにきてようやくエディーが見つかりました。背後からモリ君の指示があって、右岸側のエディーを確保。
 ようやくサイストラップを填め直し、一息つくことができました。核心部まで、あと10mくらいの位置でした。

 後続のコニー、ブッシュと合流し、左岸側から上陸。核心部、さむらいドロップを下見しました。うーん、全然違う瀬になってる…。
 ルートは左右に分かれていて、左岸側は鬼の爆裂ボイル&ホールゾーン。普段の水量ではドロップの直後に立ちはだかる巨岩が完全に沈み、直後に巨大ホールができています。うわー…。言葉が出てきません。10回やって8回は沈しそうな感じ。
 いっぽう、右岸側は普段の水量では狭すぎて通過できないのですが、これも沈み込んで航下できるようになっていました。多摩川川井堰堤のようなコブ状の岩が突出しており、ここに乗せて左岸側ルートのホールに巻き込まれないよう右岸寄りに落ちることができれば、難なく突破できそうです。

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 ここは、右岸ルートを選択しました。昨日ポーテージして初挑戦となるコニー、ブッシュも同様の選択。世界のモリ君でさえ、同じ選択肢を取りました。

 ここは全員、無事突破。



 モリ君が進入直前に沈したように見え、肝をつぶしましたが、後で聞いたら、右に傾けて下るのは「クセ」らしい。そういえば、私が沈したプレさむらいの瀬でも同じような下り方をしてましたわ。

 渓谷部はここで終了。しかし、最後にして最大の難関、はらきりの瀬が待ち受けています。
 また上陸して下見。その際にここで待機していたラナと合流しました。

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 この瀬の特徴は、落差の大きさもさることながら、ラストの落ち込みの幅が異様に狭いことに尽きます。そしてこの幅狭のドロップは、ある水量下でキーパーホールを形成するらしい。
 今日の水量では、判断がつきにくい微妙な形状でした。ブッシュ曰く、昨日のほうが水量が多く、まだ下りやすいように感じたとのこと。

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 10回下って、9回は沈しそうです。太刀打ちできそうにありません。最後の難関やし、玉砕覚悟で突撃するという選択肢もありですが、最終判断はポーテージとしました。
 コニー、ブッシュもポーテージ選択でしたが、唯一人、モリ君はやると言う。さすが世界のモリ。最後の最後でひっくり返りましたが、掴まることなくスムーズに流されていきました。



 安全志向の強いNKCの面々の中で、モリ君は飛び抜けて果敢です。経験の積み重ねというより、もともと怖いという感覚が欠落してんちゃうかと感じる時があります。この異様なまでの親水性の高さは、おそらくは天賦のものでしょう。ちょっと、羨ましい。

 はらきりの瀬の下から再開。のんびりとはいきませんが、ここからなら何とかわんこ連れでも下れます。

 浅利川との出合あたりから、再び川幅が狭まり始めました。そこにロデオボーイと呼ばれる瀬があります。こんな川を、ダウンリバーやクリーク艇ではなく、なぜプレイボートで下るのかという疑問の回答は、このスポットにあります。

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 モリ君、コニー、ブッシュはここで黙々とスポットプレイに勤しんでいました。どこにそんな体力が…。もともと私、寒いのは苦手なのに、今日この日、大月の最高気温はたったの6℃でした。真冬ばりの寒さです。長らく泳がされたのも相俟って、体は石のように固まり、比例して気力も萎え気味です。果敢にホールに突っ込んで一気に体を温めるという手もありますが、もう一度泳ぐことにでもなれば、おそらくブレイクです。ペトロクラウドです。回復の見込みはありません。ということで終始見学に徹しました。
 ちなみに、昨日は賑やかだったというこのスポットも、今日は誰一人として姿を見かけることがなく、貸し切り状態でした。



 最後の瀬もギリギリのところでこなして、ようやくテイクアウト地点に到着。漕ぎ始めた時は我々の1台しかなかったクルマが、いつの間にやら10台近く停まっていました。誰もおらんかったのは、単に一番乗りだったからというだけのようです。
 急いで着替えましたが、それでも、寒い。どうも芯から冷えたようです。震えながら、低温でゴワゴワに固まったフネを畳んでいるうちに、続々とカヤッカーが上陸してきました。そこには雑誌で見たことのある人がたくさんいてはりました。また、関東だけでなく、関西から遠征してきた方々もいたようです。この寒い冬空の下、総勢20人はくだらない賑わいようでした。

 芯まで冷えた体を暖め直すために、温かいモノが食べたい。大月名物といえば「ほうとう」ですが、並び称されるものとしてこれがあります。

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 この桂川アッパーセクション、今年の怖かったランキング上位入賞間違いなしですが、それだけに、またチャンスに恵まれたなら是非とも行きたいと思える川でした。強瀬の水位計はこれからこまめにチェックしたいですね。

 それはそうと、NKCのお三方、この度はお誘いいただいてありがとうございました。また来年を楽しみにしてます。
 コニー、今年で終わりやなんて言わんといてや!

◆参考資料

相模川水系の水力発電所一覧(東京電力)
http://www.tepco.co.jp/corp-com/elect-dict/file/zz_b06-j.html

◆水力発電所位置関係図(推定)

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川茂取水堰堤 →最大取水量:25.04t
※上流を流れる水はここで根こそぎ取水される。
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川茂発電所(ダム水路式)
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<桂川アッパーセクション>川茂〜大月
桂川強瀬観測所は強瀬橋下流200m左岸、駒橋発電所付近に位置する。
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駒橋発電所(水路式)
※強瀬で放流された水は桂川に戻ることなく直下の八ツ沢発電所取水堰堤で取水される。
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八ツ沢発電所取水堰堤 →最大取水量:41.74t
重要文化財
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<桂川ロワーセクション>猿橋〜四方津
大月観測所
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八ツ沢発電所(水路式)
概要
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松留発電所(水路式)
※八ツ沢発電所のすぐ近くにある。鶴川出合付近にて放流。
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相模湖
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 駒橋発電所・八ツ沢発電所については、東京電力が見学ツアーを行っているようです。これ、マジで行ってみたいかも。
http://www.tepco-pr.co.jp/goto/kazunogawa/index.html


ニックネーム ラナ父 at 06:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 甲信越>桂川(相模川) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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