2009年10月12日

49 第16回長良川WWFダウンリバー/三日目(長良川3)

水位:0.38m(稲成) 気温:17℃(八幡) 天気:快晴 区間:新三日市橋〜子宝温泉下
メンバー:UNKO-MAN 応援:後輩一号、川太郎


 第16回長良川WWFも、いよいよ最終日を迎えました。最終日の種目はダウンリバー。航下区間は、昨年同様に、新三日月橋から子宝温泉までの約8kmです。

 初日スプリント予選では2位でしたが、決勝では逆転1位を飾り、総合1位。二日目スラロームでは3位に沈み、総合2位にダウンしました。とはいえ、1位の美並カヌークラブとのポイント差は15ポイントと僅差。もし今日勝つことができれば、逆転優勝です。

 展開的には、かなりドラマチックです。が、現実は甘くない。
 客観的に考えれば、おそらく美並カヌークラブのほうが速いでしょう。短距離では、ほぼ互角ですが、距離が長くなると、向こうが上です。とにかくスタミナがすごく、最後までスピードが落ちない。美並カヌークラブのリーダー、社長と私とは12歳離れています。UNKO-MANなんか22歳差です。普通に考えれば、若い我々のほうが有利なはずで、事実、過去数年をかけて、圧倒的だった差を徐々に詰め、今こうして優勝争いに持ち込めるようにはなりました。しかし、あとちょっと、という差がどうしても埋まりません。美並の社長は、毎朝10km走るのが日課で、その他ジム、水泳などで身体を鍛えるのに余念のない日々を送っているアスリートです。私も鍛えたいとは常々思っているのですが、思うだけで実行したことはありません。スーツを着るとベルトがきつくて、ダイエットせなあかんなあと感じながらも意志薄弱で減食すらできない日々。ここの差でしょう。

 しかし、僅かながらも勝機はあると考えています。
 かつては、純粋に速く漕ぐことだけを考えていました。しかし今は、相手の存在も合わせて戦略を考えるようになってきています。ダウンリバーでは、H2Hのような直接的なぶつかり合いはなくても、様々な駆け引きが繰り広げられる場面が多々生じます。小細工を弄しているようにも感じるので、駆け引きは正直言ってあまり好きではありませんでした。しかし自分たちより速いチームに勝とうとすれば、ここに工夫を凝らさずして他に方法はありません。
 以前は、自分たちより速いことを受け入れるのが悔しくて、だから駆け引きするのもあまり好ましく思えませんでした。しかし今は美並カヌークラブとの厳然とした差を、割と素直に受け入れられます。駆け引きを考えるのも、逆に面白いとさえ感じています。

 作戦は、いくつか考えました。ただ、過去の経験から考えて、状況は常に変化しており、アタマで考えていても、実際には使えない場面も多い。運にも大いに左右されます。はたして幸運は舞い込んでくるのか。

 出艇順は、RJ1→RJ2→ダッキー(インフレ)で、下位順に2艇同時、1分間隔となります。2位の我々、1位の美並カヌークラブが同時出艇。去年と同じシチュエーションとなりました。コース優先権は美並カヌークラブにありましたが、若干不利と思われる左岸側を選択しました。

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 昨年は、会長の立てた体力温存作戦に基づき、美並チームの後方につこうと企んでいましたが、相手も同じ狙いで図らずも先行し、煽られまくった結果、序盤でスタミナ切れを起こしてしまいました。美並があえて左岸側を選択した意図を考えれば、今年も同じ作戦を使ってくる可能性は非常に高い。

 かつては、全力を出さず、わざとスピードを落とすことに大いに抵抗がありました。勝つための最良の策、とアタマでは分かっていても、気持ちの面で納得できなかったのです。始めからアクセル全開の先行逃げ切りこそが信条でした。しかし今年は、スピードに緩急をつけることを含め、勝つためにあらゆる手を使うことにむしろ積極的になっています。だって、謀略を駆使して、自分たちより速いチームを破るってすごい楽しそうやないですか。発想の転換ですね。
 この作戦の遂行には、相方のUNKO-MANの協力が不可欠です。私の考え方は、自分たちの方が遅いというのが起点になっているので、深く話すことはしませんでしたが、ペース維持のために序盤は後方につくというのは賛同してくれました。

 さあいよいよ運命のスタート。本来、タイミングが命のランニングスタート形式ですが、今回はどうでもいい。数秒遅れてスタートラインを越える。そしてそれは、相手も同じでした。明らかにスピードを落としていて、しばらく探り合いの状態が続きました。

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 スケボーの瀬で、先行させることに成功。第一ステップはクリアしました。次なるステップは付かず離れず、金魚のフンのごとくトレースします。そして、核心部ともいうべき第三ステップは、セタラズで秘策を用い、逆転。その後、第四ステップとして、攻守入れ替わり、ゴールまで逃げ切りに入る。戦略の概要は、以上のようなものです。

 第二ステップでは、秘策成功率向上のため、極力先行チームがいない状態にする必要がありました。というのも、1分前に出艇した流の会、あけぼのタイフーンの2チームには秘策の内容を話していました(話した時点で、もはや秘策と呼ぶのは矛盾してますが)。また、他にも使おうと考えているチームもいるかもしれません。もし、目の前で使われるようなことがあれば、間違いなくパクられるでしょう。
 理想的には、セタラズに至るまでにダッキー全チームをぶっこ抜くのが一番なんですが、さすがに厳しいでしょう。1分前に出たあけぼのタイフーンなど、差を詰めることすら難しいかもしれません。また、美並カヌークラブが先行しているので、ペースコントロールもできません。最終的には、運任せです。

 美並チームのペースは、初めはゆっくりとしたものでした。逸る気持ちを抑え、ぴったりと後に付く。リョウヅキでフリップしたと思しきスプラッシュキッズを追い抜く。まずは一艇。
 場が動き出したと感じたのは、円空の瀬でした。あけぼのタイフーンがエディーにいましたが、一人しか乗っていません。どうも、岩壁でフリップしたようです。これを機に、均衡が一気にガラガラと崩れたような気がします。円空を過ぎた瀞場から、俄かに美並チームのペースが上がりました。
 去年と比べて、残り体力は充分なはずでしたが、はじめ1mもなかった差が、3m,そして5mとじりじり引き離されていく。ここが踏ん張りどころと必死で追い縋った結果、ほぼ全力疾漕となり、ふれあい広場手前で流の会をついに捉えました。

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 3位〜5位チームを追い抜けたことで、展開は理想的なものになってきました。いよいよセタラズに突入。第三ステップです。入り口で、さらに6位のくわ家も追い抜く。
 前方には、ラフトとダッキー1艇がいました。ラフトは無視していいでしょう。気になるダッキーは、7位の一橋大学です。ここまで詰めたら、何としても秘策を成功させたい。美並との艇間は約10mでした。何とか、ひっくり返せそうな距離です。
 しかし、一橋は行ってほしくない場所に向かっています。まさか、まさか。
 ギニャー、ホンマに行ってもうたー!
 美並カヌークラブが、バウを急旋回して一橋に合わせ、トレース態勢に入るのが見えました。ああ〜、ここまで来たのに…。

 しかし、ここで思いがけない幸運が舞い降りてきました。一橋が、瀬の中央で一瞬スタック。コースを塞がれるような形となり、美並チームは図らずも左岸側へと流されていったのです。
 うわっ、めちゃめちゃラッキーやん。満を持して秘策を用い、成功させました。

 見事、逆転です。やった!

 ここから第四ステップへと入ります。
 計画では、ここで大差をつけ、温存していた体力を放出し、一気に逃げ切り態勢に入るというものでした。しかし実際は、去年よりマシとはいえ、既にそれなりに体力を消費してしまい、また、せいぜい10m程度しか差をつけられませんでした。これでは、再逆転されるかもしれません。

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 どっかんの瀬を抜けると、ザンゲの瀬まで、長い長い瀞場が待ち受けています。第四ステップのキモは、この瀞場を持ちこたえられるかどうかにかかっていると考えていました。

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 しかし、後方との差は早々と縮められ、凄まじいプレッシャーをかけられることになりました。社長が時々、奇声を上げて煽ってきます。まずい。非常にまずい展開です。去年と同じパターンに嵌りつつあります。何とか引き離さなくてはと焦燥感に駆られ、残り少ないスタミナがどんどん失われる。
 頼みの綱であるUNKO-MANはよく漕いでくれてます。しかし、上体がブレてきています。しばらくすると持ち直すのですが、これ以上の伸びはもう期待できません。

 はたして、下田橋付近でついに完全に追いつかれてしまいました。もう、接触しそうなくらい近づいています。ここまで積み重ねても、また負けるのかと暗い絶望感が襲ってきました。
 しかし、一向に追い抜こうとしてきません。まさか、向こうもへばったのか? と期待して振り返りましたが、全くもってそんな気配は見えません。
 ひょっとすると、追い越すタイミングを窺っているのかもしれない。だとしたら、その時まで仕掛けてくることはないはず。ということは、常時全力疾漕で逃げ続ける必要は必ずしもないことになります。そう思い至ると、プレッシャーが少し和らいだような気がしてきました。
 実はまだ、逆転用の策略を持っていました。内容的には微妙ですが、抜かれてもまだ望みはあります。最悪、抜かれてもいいから、焦るなとUNKO-MANにも言い聞かせ、漕ぎ続ける。

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 先行したまま、ザンゲの瀬に突入。相変わらずビタッと後ろにくっつかれていますが、キモであった瀞場は何とか、凌ぎ切りました。しかし体力はもはや限界に近く、コース取りはブレブレです。瀬の途中でホールにもろにハマり、失速した時はやっべえと思いましたが、向こうはまだ仕掛けてきません。

 ザンゲの瀬を越えれば、ゴールも近い。長かった戦いも、いよいよ最終局面を迎えました。この先は、川幅が広がって浅瀬の多い川相になっていますが、今日の水量だと全般的に浅く、航下ルートが限られています。さっきまでの瀞場と異なり、追い越せる空間を確保しづらいという点で、先行する我々にとっては有利な状況になったと言えそうです。

 美並カヌークラブは、相変わらず真後ろに張り付いたまま、追尾態勢を崩そうとしません。まさか、ひょっとして、最後の最後で仕掛けてこようと考えているんでしょうか。ゴールの子宝温泉付近は、再び川幅が狭まり、充分な水位があります。力業で追い抜くには絶好の場所です。もしそうなれば、H2Hばりの肉弾戦も覚悟しなければなりませんが、疲労困憊の我々が果たして守りきれるかどうか。ぶつかり合いは、なるべくなら避けたい。

 新吉田橋を通過。この先は長い浅瀬が延々と続いています。
 刹那閃くものがあり、オーソドックスな中央ルートから離れ、左岸ベタのアウトコースへ寄せました。後でUNKO-MANが言ってましたが、なんでこっち? と当惑していたらしい。このルートは、とくに狭く、フネが併走できる箇所は少ない。追いつくのは容易でも、追い抜くのは至難なので仕掛けにくいはずと考えたのです。
 ただ、もし我々の陽動が無視され、そのまま中央ルートに乗る形で仕掛けられると際どい勝負になるでしょう。はたして、このまま追尾してくるのか、それとも思い切って別ルートから仕掛けてくるのか、賭けとなります。

 美並カヌークラブの選択は、前者でした。賭けは、勝ちです。これで、浅瀬の終わりまでは先行できるでしょう。もし仕掛けてきても、ブロックは容易ですし、強引にやろうとすればスタックは必至です。

 左岸ルートを確保してすぐ、後方で岩が擦れる音がしました。美並カヌークラブが、浅瀬に乗り上げていました。仕掛けてきたのか、単なるルートミスかは分かりませんが、トータルで10秒くらいはロスしたでしょう。一気に、突き放しました。
 「勝利」の二文字が、現実味を帯びてきました。鼓動が高まり、腕が震える。しかし、みるみるうちに差は縮められていきます。勝負は決まったと思ってたのに、もう10mくらい後ろまで迫られています。ここで詰められたら、もはやなすすべはありません。

 カーブを曲がりきると、ラストの瀬が見えました。その向こうには、眩しく輝く“finish”のフラッグ。メインカレントで加速し、その勢いを維持して、ゴールラインを通過。

 勝った。ホントに勝ってもうた。まさに全身全霊という言葉が相応しい、体力だけでなく、アタマも最後の最後までフルに使っての勝利でした。

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 ダウンリバーの結果は1位。昨日終了時点での15ポイント差をひっくり返し、逆転で総合優勝を決めました。結果的には、一昨年、去年に続いて三年連続の栄冠となりました。

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 恒例のお立ち台です。いつも酒臭くなるので、今年は見学に回りました。

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 美並カヌークラブとは10秒差でした。この、10秒という数字からは決して窺い知ることのできないドラマがありました。鮮やかな勝利とは言い難い。しかし、こんな戦い方もあるんやと、また別種の、新しい楽しさを知った気がします。これまでのレースでも、一応戦略らしきものは立てていましたが、ここまで彼我の力量の差を意識した上で立案し、かつ実践できたのは初めてだと思います。
おかげで内容的には、これまでで最も満足のいくものだったと言えるんとちゃいますかね。忘れられない思い出となりそうです。

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 今回の勝利は、数々の奇策と、それらを成功せしめた幸運によるものが大きいでしょう。そして奇策というものは、一度きりしか使えないものです。来年は同じ手は使えないでしょうね。およそ全部、内容もバラしちゃったし(笑)。

【2009WWF インフレ部門 ダウンリバー】

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【2009WWF インフレ部門 総合順位】

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 とは言っても、ある程度実力が拮抗していなければ、策略を用いても活かすことができません。互角に渡り合えるレベルでいられたのは、ひとえに相方UNKO-MANの力によるところが大でしょう。ありがとうございました。

 そして最後になりましたが、今年もスラのゲート設営やら回送やらフネの番やらで大会運営を支えてくれたスタッフの皆様、本当にありがとうございました。

タグ:レース
ニックネーム ラナ父 at 04:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 東海>長良川 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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